今回は、マーケティングの観点から展示会の選定について考えてみたいと思います。
運営やフォローのクオリティにこだわる事がとても大事ですが、この「展示会を選ぶ」工程もイベントの結果に大きく影響してきます。
目次
展示会の出展目的とは
一般的に、市場調査と集客の2つの意味が混在している言葉が「マーケティング」です。
展示会への出展目的もこの2つに絞られてくるでしょう。
現場の担当者はやプロモーションや集客施策のひとつとして。経営層や管理者はブランディグの一貫として、競合他社調査として。様々な目的をもって出展を決定されています。
出展する展示会を決める
展示会の数は大規模のものから小規模のものまで、数え切れないほどあります。
膨大なイベント数の中から、自社の製品やサービス特性と、展示会の概要を考慮して出展する展示会を決定します。
このような工程を経て皆さまも展示会への出展を決めていらっしゃると思います。
展示会の選定に必要な3つの基準
その中で出展する展示会を選ぶ基準をもう少し細かく考えてみましょう。
ただ規模の大きな展示会に出ていれば良いかというとそうでもありません。
これには3つの視点がまず大事になってきます。
1つめの基準は「開催規模」
まずは展示会自体の開催規模です。
実はこの要素はマーケティング観点で展示会を選ぶ有効な材料になります。
自社のブースと自社のサービスや製品の特長を来場者に覚えて帰ってもらう為には、マーケティング予算と開催規模を見比べて考える必要があります。
視点としては、「勝ちやすい場所で勝負して、負ける場所では勝負しない」。
「目立てるか?目立てないか」。このような見方を持って展示会選定していく意識が大切です。
大きな展示会への考え方
大きな展示会に出れば、来場者の集客量は計算できます。
ただ、自社のブースに立ち寄ってもらえるかどうかはまた別の話しです。
ブースに寄ってもらう為には…。製品やサービスの特長を覚えてもらう為には…。勝てる場所にする為には…。目立つ為には…。
これらを考えると大きな展示会には、必然的に小間数やブースデザイン、運営自体にコストがかかってきます。
マーケティング予算を大きく割ける場合には大きな展示会に出展すると効果もより大きなものになります。
小さな展示会への考え方
一方で小さな展示会であれば、来場者も少ないので、当然集客量は弱いです。
ただし出展社自体も少ないので競合が少なく、来てもらった来場者に自社の製品やサービスの説明をしっかり覚えて帰ってもらえるメリットもあります。
また小間数やブースデザイン、運営自体のコストも大きな展示会に比べれば安価に済みます。
コストや立地の理由もさることながら、製品やサービスをリリースしたばかりの場合は小さな展示会への出展のほうがメリットが多いように思います。
こちらは後ほど理由を記述しています。
2つめの基準は「来場者層」
次に想定すべきところは来場客層です。
これは展示会の種類によって、来場者の想定される業種や職種、部署など事前に分かっていますので、まずは皆さまそちらからの出展可否の判断をされていると思います。
そしてここは、さらに深く考えてみる事ができます。
そのキーワードは「キャズム理論」との照合です。
キャズム理論とは
これは下図にあるように、新しい製品(プロダクト)が普及していく曲線を描いたマーケティング理論です。
イノベーターやアーリーアダプターといった実績はないけれども、革新性を好む少数層に新製品は導入されて、その後に実績重視の多数層に導入され、プロダクトは一般的な認知度を得て普及していくという曲線です。
そして多くのプロダクトが実績重視の多数層へ一般普及していく前に、キャズム(溝)を越えられずに消えていく。
キャズム(溝)をどのように越えていくかを考える事が大事です。という考え方になります。
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●イノベーター
実績は度外視で革新性や新しいものに興味がある層(革新性重視)
●アーリーアダプター
革新性や新しいものに興味がある層(革新性重視)
↑
【この間にあるキャズム(溝)を大多数の製品は越えられず、消えていく】
↓
●アーリーマジョリティ
実績があれば、革新性や新しいものを取り入れたいと思っている層(安定志向)
●レイトマジョリティ
実績重視の層(安定志向)
●ラガード
実績で導入を考える層(安定志向)
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これを展示会選定にどのように役立てていくかを、展示会の開催規模と掛け合わせてご説明します。
3つめの基準は「開催規模」✕「来場客層」の掛け合わせ
【小さな展示会の場合】
小さな展示会の特長としていえるのが、テーマが絞られている(マニアックである)事と、展示会自体の知名度があまりないという点です。
これはマーケティングのフィルタリングで考えると好材料です。
まず、知名度がない展示会の開催情報をキャッチしている時点で情報収集への意識が高い「情報リテラシー高」の人々と言えます。
またそこから来場している時点で、大きな展示会では得られない「新しい情報を求めている層」であり、かつ「情報リテラシー高」の人々であると言えます。
これらを統合して考えると、小さな展示会への来場者はイノベーターやアーリーアダプター層(革新性重視)の来場率が非常に高いのです。
この視点を取り入れる事で来場者の業種や職種、部署、役職ももちろんですが、来場者の「興味の持ち方」も展示会選定の判断材料として考える事ができるようになります。
新プロダクトをリリースしたばかりの場合は、ターゲット層となるイノベーターやアーリーアダプターが来場する小さな展示会への出展したほうがメリットを得られると思います。
来場しているだけでフィルダリングされている。マーケティング効率を考えても、有効な選定材料です。
【大きな展示会の場合】
市場を牽引するような実績十分な出展社がたくさん出てます。来場者はキャズム理論でいうアーリーマジョリティ以降の安定志向の来場者が多い傾向にあります。
各社、小間数を多くとり、ブース装飾にもコストをかけている傾向にあります。
そういった大手企業と対等にみてもらう為には、小間数も多く必要になり、ブースデザインにも多大なコストがかかります。お金の掛け方勝負のようなパワープレイが必要になります。
キャズムを超える段階のプロダクトフェーズにきている企業にとっては、ひとつ起爆剤としてうまく活用できるのではないかと思います。
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※キャズム理論に関しては、こちらの記事「【マーケティングテクノロジーフェア2014】2年7ヶ月経過後の展示会フォロー実践レポート」でも細かく触れてますのでご興味あればご参照ください。
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ちなみに…市場調査として展示会を考察
来場者として展示会を見れば業界のトレンドが把握でき、それが市場調査と考えている方も多いですが、来場者として参加するのと、出展者(当事者)として参加するのとでは、入ってくる情報の質が全く異なります。
結論からいうと展示会は出展者(当事者)として関わったほうが、はるかに有益な市場情報を得る事ができます。
これは頭で覚えるのと、実際に経験するのとでは経験値が全く違う。学ぶと経験の差の感覚に似ています。
定期的に繰り返し出展する事で、表面上のブームのようなものだけではなく、自社と比較して競合他社各社を見れるようになり、展示ブースの見せ方、出展製品の移り変わり、来場者層の変化、ニーズの変化など鮮度の高い「今」必要な情報が数多く取得できます。
これは当事者として比較をしているから得られる情報であって、傍観者では決して得られないのです。
こういった要素も出展目的として入ってくると奥行きのある展示会運営となるのではないでしょうか。
まとめ
せっかく多大な費用をかけて展示会に出展するので、効果を最大限出したいですよね。
その為には展示会選定の時点からPDCAを回していく意識が大切だと思います。
経営層やマネジメント層を積極的に巻き込んで、多角的に展示会を活用していく視点も重要です。
市場調査の視点も取り入れたマーケティングチャネルとして展示会を有効的に活用して頂ければと思います。