少し前からBtoBマーケティング業界では、ABMという新たなマーケティング手法に注目が集まっています。
あまり聞き慣れないワードですがABMはこれまでのマーケティング施策とどう異なるのか。
そして注目が集まる背景などをご紹介致します。
ABMとは
ABMとはアカウントベースドマーケティングと呼ばれる”特定の企業をターゲットとしたマーケティング手法”を指します。
リードナーチャリングやリードジェネレーション活動、ペルソナ設計などこれまでのマーケティング施策ではリード=個人を対象とした考え方が中心の施策が大半でした。
しかしABMでは保有する見込み顧客情報を統合し、リード(個人)ではなく、アカウント(企業)単位で攻め入るマーケティング・営業活動となります。
その特徴として例えば”EC業界に属する企業”や”自動車業界に属する企業”など、特定の業界に属する企業のことを指すのではなく、更に深掘りしたアマゾンやトヨタなどの具体的企業をリストアップし、アプローチを行う手法となります。
ABMのメリット
意思決定者に対するアプローチでリードタイムを短くする
ABMでは選定したアカウントに所属するリードデータを洗い出し、その人の部署や役職、業務内容から意思決定者を発掘します。
従来のリードをターゲットとした手法ではWEBサイトの閲覧状況の把握からリードの熱量を図り、導入の可能性を予測しながらアプローチを行っていました。
しかし、昨今のBtoB業界では特定の担当者のみが導入に関する決済を持つことは少なく、複数名のスタッフが役割を担いながら製品導入を進めているケースがほとんどです。
そのため、1リードに対する働きかけだけではなく、俯瞰した視点でのアプローチが求められます。
ABMではアカウント(企業)に複数の担当者情報を紐づけて管理することでどの担当者に比重においてアプローチを行うべきかかの判断が容易になり、結果的に導入までのリードタイム短縮に繋がります。
費用対効果が高い
マーケティング施策の主流であったリード(個人)へのアプローチ手法(デマンドジェネレーション活動)では、
①大量のリード獲得
②ナーチャリング活動による選別
の2工程が発生します。
これらの工程ではリードを獲得するためにWEB広告やイベント出展など施策や、見込み判断の選別のためにテレコールやメールマーケティングの企画・実施など金銭的・人的コストが多大に発生します。
しかしABMではすでにアプローチを行うべき対象を選定していますので”網を張ってリードを獲得する”という活動を省くことが可能になります。
またその特性上、ターゲット数が100社、といった形で限定されるため、デマンドジェネレーション活動に比べ金銭的・人的コストを控えた取り組みが可能となります。
ABMの準備と実施にはインサイドセールスが効果的
ではABMを導入にはどのようなポイントがあるのでしょうか。
①企業データと個人データの整理
ABMではターゲットが”企業(アカウント)”となるとお伝えしましたが実際にアプローチをする対象はその企業に属する”人”になります。
ただABMではその”アカウント”に所属する”人”の情報をすべて洗い出し、どの担当者に対してアプローチすることがサービス導入に有効的に効くのか判断を行います。
そのため意思決定者を発掘するため、アカウントに紐づく担当者のデータをしっかりと整理・格納する必要があります。
具体的には以下のような情報の持たせ方が必要となります。
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┌須藤 宏
株式会社インターパーク┼柴田 義剛
└西教 久子
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アカウントに対して担当者がぶら下がっているのがご確認できると思います。
この形で管理することで企業名を検索した際にどんな担当者と接点を持ったのかがひと目で確認することが可能になります。
逆に以下のようなケースでは担当者情報を適切に管理することができず、ABMではリスクになってしまいます。
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┌須藤 宏
株式会社インターパーク┤
└柴田 義剛
㈱インターパーク----------西教 久子
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本来、同じ「株式会社インターパーク」というアカウントに紐づくべき担当者情報が別データとして登録されています。
これは会社名で名寄せを掛けた際に「株式会社インターパーク」と「㈱インターパーク」が別企業と認識されデータが登録されてしまったために起こるケースです。
同一アカウントの別担当者にも関わらず、アカウント自体が新たに登録されてしまえば意思決定者の発掘において有効な情報の取り逃がしにもなりかねません。
そのためにも担当者情報を取りまとめる際には高い精度の名寄せが求められます。
②すべての行動情報を付与する
次に整理したアカウントとそれに紐づく担当者データに行動情報を付与する作業を行います。
ただ単にアカウントや担当者の情報をまとめただけではどんな業務をしている担当者なのか、どんな課題を保有しているのかなど攻め口がありません。
アカウントを知る・担当者を知るためにもこれまでの接点の分析が必要となります。
過去の接点を紐解くには展示会やセミナーなどのイベント情報や問い合わせやWEBの閲覧履歴などオンライン・オフラインを組み合わせて情報を紐づけることで担当者のタイムラインが浮かび上がります。
例として株式会社インターパークの須藤さんの行動情報をまとめると以下のような行動が見えてきました。
<例:マーケティング、営業コンサルサービス会社でのABM>
①展示会への来場お礼メールを送付
↓
②本文内の営業に関するお役立ち記事ページにアクセスするものの離脱
↓
③数週間後、サービスページを閲覧し離脱
↓
④メルマガでの情報案内、営業改革に関する無料セミナーを案内
↓
⑤無料セミナーページを閲覧、再度お役立ちページを閲覧したのち離脱
上記の例ですと、須藤さんが”営業”というワードをもとに情報を集めているのではないかと仮説が建てられます。
セミナーページにもアクセスしたが申し込みには至らないという点を掘り下げてみるとセミナーの立て付けが自身の課題とマッチしていないという判断も建てられます。
例えば須藤さんへのテレコールでそれとなく課題や現状のヒアリングをする際のポイントとしても活用できます。
このように担当者情報に行動情報を付与することでどこに攻めいればよいのかといった仮説を立てることが可能になります。
これは担当者の数だけ新たなタイムラインを発見することができますのでその分、建てられる仮説の数も大幅に増え、様々な確度でのアプローチが可能になります。
③テレコールからBANT情報を吸い上げる
BANT情報とは見込み判断に用いる指標のことで4つの条件の頭文字からなるBtoB用語です。
・Budget→予算間
・Authority→決裁権
・Needs→必要性
・Timeframe→導入時期
これらの情報を収集することは案件の確度や課題間、キーマンといった営業活動を優位に進める上で大変重要な情報と言えます。
しかしBANT情報は秘匿性が高いため、容易に収集できる情報ではありません。
そこで注意したいのがBANT情報を担当者の業務に落とし込んでヒアリングすることです。
例えば
必要性を確認するなら・・・
自社が提供するモノ・コトで解決できる課題はあるかどうかをヒアリングする
決済担当者を割り出すなら・・・
電話口担当者の業務内容や部署の役割をヒアリングする
導入タイミングを把握するなら・・・
社内稟議のタイミングをヒアリングする
予算間を把握するなら・・・
すでに予算をとっているのかをヒアリングする
上記のように相手(電話口担当者)の業務になぞらえることでハードルを下げ、コミュニケーションを図ることが可能になります。
特に製品選定において関係者が部門をまたぐようなアカウントの場合にはどれだけ情報を集められるかが導入のポイントとも言えます。
場合によっては窓口の担当者だけではなく、サブ担当者からもBANT情報をヒアリングすることで提案に活用できる有用な情報を集めることも可能かと思います。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
マーケティング・営業対象をヒトという点からアカウントという面で捉えるABMではいかにデータを適切な形で捉えられるかが成功の鍵となります。
まずは対象企業の特定を行い、自社に眠っている担当者情報を洗い出してみることで成功の緒が見つかるかもしれません。
新たな施策としてのご参考になりますと幸いです。