BtoBマーケティング、営業では今や一般的になったリードナーチャリングですが新しくマーケティング担当になった方々に向けに改めてリードナーチャリングの概要から始め方、要点を解説させていただきます。
目次
リードナーチャリングとは
リードナーチャリングとはサービスの導入ステージには至っていない、または今後購入する可能性のある、見込み顧客(リード)に対し、購入を促すようなアプローチやフォローを行いましょう、というマーケティング施策やその概念の総称です。
なぜリードナーチャリングが必要なのか?
リードナーチャリングがこれだけ普及した要因には見込み顧客が自主的に情報を取捨選択することができるようになったという環境変化にあります。
以前までは購買担当者はサービスや製品を導入するとなると基本的には各社の営業マンから情報を取得し、どのサービスが自社に適しているのか判断していました。
しかしこの十数年間でインターネットが当たり前の存在となり、購買担当者はわざわざ営業担当から話を聞く必要もなくなり、自ら製品情報などを調べられるようになりました。
またいつ、どこからでも情報を集められることができるようになったことでこれまでのように営業が訪問しにくる=時間を拘束されるような対応にもネガティブな反応をする傾向が高まっています。
リードナーチャリングで得られる効果・メリットとは?
ではリードーチャリングに取り組むことで得られるメリットは一体どのようなものなのか解説していきます。
1.将来の顧客流出を防ぐことができる
営業は数字につながる顧客を追うため、どうしても時間のかかるリードへの対応は手薄になりがちです。
提案の時期が近づいた時に営業が対応できるのであれば問題はありませんがそのまま忘れられてしまった場合には競合企業のサービスを契約してしまう可能性も十分に考えられます。
リードナーチャリングではこのような提案に時間を要するリードに対して定期的にアプローチを実施することで関係を構築し、いざ提案時期になった際に検討の土台に乗せてもらうことが可能になります。
2.営業マンの活動を効率化することができる
営業マンの人数も営業活動に費やせる時間も有限です。
そのため事前に商談へ向かう企業の情報を集めベストな提案ができるよう最大限の努力が求められます。
リードナーチャリングでは、各見込み顧客の検討ステージを把握し、そのステージにフィットしたアプローチを実施することで商談から案件化につながる可能性のある見込み顧客に対して訪問を実施する、といった営業リソースの最適化を実現できます。
3.個人に依存しない組織的営業が可能になる
リストの作成、初期営業訪問を営業が一人ひとり行っているとリストの作成も商談のススメ方も個人に依存したやり方となり、結果活動量やパフォーマンスにばらつきがでてしまいます。
リードナーチャリングを実施することで
チーム内でまず訪問すべきリードの定義は何なのか?
具体的に要件を満たしたリードのアポイントを取得した場合、商談の進め方はどのように行うのかなど、
組織化した取り決めにより個人に依存した営業スタイルから脱却することになります。
リードナーチャリングはどのように始める?
では具体的にどのような流れでリードナーチャリングをすすめるとよいかの流れをご紹介致します。
①顧客データの一元化
リードナーチャリングを始めるにはその対象となるリードデータベースの一元管理や構築からスタートします。
御社でも下記のような経緯で獲得したリードがあるのではないでしょうか?
・展示会、セミナーで獲得した名刺
・飛び込み先で獲得した名刺
・WEB問い合わせを頂いたリード
・パートナー企業から紹介されたリード
などです。
これらの情報をかき集め一元化をすることでナーチャリングを実行する際に簡単にリードの抽出・検索が行えるようになります。
②ターゲットリードを洗い出す
データベースに取り込んだリードがすべて見込み顧客となる可能性はとても低いです。
例えば競合企業や取引先企業のデータも混ざっている可能性も少なくありません。
また同一人物のリードデータが複数存在してしまうことも考えられます。
上記のような状態では実施した施策の正しい効果測定も行えなくなり、それだけでデータベースとしての信頼を損ねてしまいます。
ナーチャリングアクションを起こす前に必ず登録されているデータのチェックを実施しましょう。
※①、②は同時に進めることも可能です。
ナーチャリングでCRMなどを利用しデータベースを構築する場合は「名寄せ」機能が備わっているシステムがほとんどです。
名寄せを実行しながらデータベース構築できれば重複登録されているリードデータのクレンジング工程をカットすることが可能になります。
名寄せについては下記記事もご参考ください。
詳しくは下記「顧客管理の基本は”名寄せ”と”データクレンジング”」の記事をご参考ください。
③リスト化する
リードデータベースの中からどのような属性を持つリードに対してアプローチを行うのかを検討し、対象リードの抽出を行います。
リスト化する条件では下記のような要素の利用が一般的です。
属性情報
役職、企業規模、部門、資本金、業種など一般的に公開されている情報です。
これらの情報を駆使すると、自社製品の導入割合が最も高い部門や導入の意思決定権を持つ役職者などの検索が可能になります。
属性によるリスト化のメリットとしてこれまでの自社で培ってきた経験をもとに対象リストの抽出が行えるため、各リードとも比較的ポジティブな反応をしてもらやすいという点が挙げられます。
注意点としては自社データベースの属性情報が思ったよりも足りていないということが考えれます。
データベース内に登録される情報は基本的には名刺にかかれている範囲の情報です。
そのため、役職や部門辺りは名刺情報だけでカバー可能ですが企業規模や資本金といった情報は別途補わなければなりません。
このような場合は企業情報を購入し、名寄せしながら各リードに情報を付与する作業が発生するため、属性情報をもとにしたリスト化を重要視する場合は注意しなければなりません。
接点情報
展示会やセミナー来ていただいたなどの各リードとの接点をベースとした情報です。
先程の属性情報は自社の経験則からリスト導き出しましたが接点情報ではリードとどれだけ接触しているのかをもとにリスト化を実行できるため、リードがどの程度興味を持っているのか順でデータを抽出できる点がメリットとなります。
接点情報ではただ問い合わせをもらった、展示会にきたという接点があるという事実だけなく、掘り下げた情報を活用できます。
例えば問い合わせで合っても問い合わせ時の項目に
【導入の状況】 「半年以内の導入を予定」「年内での導入を予定」「時期は未定だが導入を予定」「情報収集段階」
のような情報があれば今どのような検討状況なのかという付加情報を参考とした検索も可能になります。
このように接点情報を駆使することでより精度の高いピンポイントのデータ抽出が可能になります。
ただし接点情報にも注意点があります。それはどの程度のデータが残っているかです。
展示会やセミナーであれば紙のアンケートや名刺の裏などに情報を残しているかもしれませんがしっかりと保管されているでしょうか?
またこれらの情報が紙資料として保管していても紙のままの状態では検索候補としてデータ活用はできませんので紙からデータべースに記録を移すといった作業が発生してしまいます。
もし手元にアンケートなどが残っている場合はデータ入力を請け負ってくれるBPOを企業などに依頼し、エクセル化してもらう、そしてリードに紐付けるといったことも視野に入れておくと良いかと思います。
④インサイドセールスによるアプローチ
インサイドセールスとは電話とメールを活用し、訪問せずに啓蒙や育成を行うアプローチ手法です。
インサイドセールスの真髄はリードそれぞれに電話でコミュニケーションを行う「個」の考え方とセグメントしたリードを塊と捉え、メールによる情報配信を行う「群」の考え方にあります。
リードナーチャリングではリード毎の検討状況やステージに応じて適切な情報を届けます。
そのためそれぞれのリードが今どんな状況に置かれているのかを把握する電話、そして置かれた状況に合わせた情報配信を行うメール。
この2つの組み合わせが大変効果を発揮します。
□インサイドセールスにおける電話□
電話での顧客状態の把握としてはBANT情報が取得できるのがベストです。
BANT情報とはサービス導入に対する必要性、決済権、導入時期、予算の有無などを総称した情報です。
リードナーチャリングのゴールとしてはこれらの情報を取得し、案件化判断を行うことにありますがこれらの情報はおいそれと出されるような情報ではありません。
そのため更に一歩引いたヒアリングからスタートする必要があります。
ここでリードの課題を整理するという考え方があります。
これは何のためにサービスや製品を導入するのかを改めて認識してもらうことに繋がります。
現状の運用体制はどのようになっているのか、その運用体制での実務的な課題はどのようなものなのか、そしてその課題は経営的にはどのような障害となるのか、などです。
これらのヒアリングから実際に課題として言えるものなのか、そうではないのか、はたまた重大な課題なのかどうかをリードに再認識してもらうことができます。
リード自身も課題ということを認識すれば社内提案で合ったり新たな取組としてチームや部署の課題として訴求しやすくなります。
BANTばかりを意識するのではなく、リードの課題はどこにあるのかを考えると自然と前向きなヒアリングが出来るようになります。
□インサイドセールスにおけるメール□
インサイドセールスにおけるメールではリードの課題間に合わせた資料やコンテンツを送付し、リードのテンションを一定に保ち続ける役割があります。
例えばリードからヒアリングした課題に合致する他社導入事例やテーマが合致するセミナー情報を届けるといった具合です。
どのような情報を届けるかのトリガーは基本的にヒアリングで得られた情報が参考となります。
そのため、届ける内容も様々用意する必要があります。
興味ニーズに合わせてみると以下のようなイメージです。
■興味低い
↑業界の最新ニュース
│課題ごとの資料集
│導入事例
│製品の特徴資料
↓デモ体験などのキャンペーン
■興味高い
業界ニュースやトレンドなどのちょっとした情報から事例や体験キャンペーンといった課題を自分ゴト化しやすい情報までを網羅的に整える必要があります。
番外編 リマーケティング広告
少しそれますがWEB広告を実施している場合、リマーケティング広告がナーチャリングと相性が良いです。
リマーケティング広告とはこれまでに自社自社サイトに訪問した不特定多数のユーザーに対し、バナー広告で追いかけるというものです。
例えば半年以内にWEBサイトに訪れたユーザーなど期間を絞った広告配信も可能ですのでスポットで配信すると、そういえばこのサービス一時期検討していたな・・・などサービスや課題を再想起させることに繋がります。
リードナーチャリングの第一歩。スモールスタートで始めるなら?
リードナーチャリングを実施するための準備から実働、そして振り返りまでを一連の流れでご紹介致しました。
しかしながらリードナーチャリングを始めよう!と思ってもヒトを巻き込んで組織的な活動を実施するまでスケールさせるには関係者への説得など関係ないところで疲弊しがちです。
そこで現在実施しているマーケティング・営業活動にリードナーチャリング要素をプラスαし、組み込む手法もご紹介致します。
展示会にリードナーチャリングを組み込むなら?
1 名刺を見込み度合いで分類する
展示会では一度に大量の名刺獲得が期待できますが蓋を開けてみるとその熱量は様々です。
そのような状態ですべての名刺に同じようなアプローチ手法を取ることは効率的とは言えません。
ですので、獲得名刺を3段階程度の見込みランクに分類し、それぞれ対応を変化させましょう。
「今すぐ客」・・・近々での導入を検討しており、コンペなど具体的な営業対応が必要な来場者
「そのうち客」・・・課題を感じている、取り組まなければならないといった明確な意思は感じるが時期が未定の来場者
「関心なし客」・・・どう転んでも導入には至らない、ターゲット外の来場者
2 見込み度合いに応じたフォローの実施
「今すぐ客」は課題やニーズがはっきりしていのでそのまま営業にパスし、商談、案件化を進めてもらうようなスピード間ある対応を実施しましょう。
「そのうち客」に関しては御礼メールや御礼の電話などは問題ありませんが訪問営業はまだ早いです。そのため電話でのヒアリングを実施しましょう。
展示会というきっかけ効果もあり、来場者も当日の紹介やサービス内容が残っていやすい状態です。
インサイドセールス電話編でご紹介したBANT情報もハードル低くヒアリングすることも可能です。
「関心なし客」は紹介したサービスとは無縁の部署で合ったり、そもそも提供サービスを利用するようなタイミングがないといったケースが該当します。
そのため無理にメール配信などでニーズ喚起を実施しても業務と関係ないメールが来る=鬱陶しいな、とネガティブな反応もされかねません。
もし情報を案内するとしても新製品のリリースなどに留めておきましょう。
今回は展示会を例に切り取り、ナーチャリング要素取り入れてみましたが展示会だけではなく、セミナーや電話、WEBからの問い合わせにもこのようにナーチャリング要素を取り入れることが可能です。
まとめ
いかがでしたでしょうか
今回はリードナーチャリングの概要やメリット、そしてどんな手順で始めるとよいのかをご紹介させていただきました。
リードナーチャリングに取り組んでいるかどうかで、今後の自社の成長度合いは大きく変わります。
まずは無理のない範囲で取り組める部分からスタートアップすることをおすすめ致します。